ビジネス/経済
ミャンマーの軍事政権トップであるミン・アウン・フライン大統領は、発足後100日以内に国内外からの投資を拡大し、雇用機会不足の解消を図ると表明していた。しかし、その期間中にヤンゴン管区の工業団地では約2,000人の労働者が解雇される事態となった。
6月末にはシュエピタ工業団地にある Kings Rich Fashion (Myanmar) 工場が閉鎖される予定で、1,000人以上の労働者が職を失う見込みである。また、シュエピタ・タドゥカン工業団地の Sun Rise (Myanmar) Fashion 工場では抗議活動に参加した700人以上の労働者が解雇され、シュエリンバン工業団地の Honda (2) 工場でも賃上げを要求した約100人の労働者が解雇された。
Kings Rich Fashion (Myanmar) は、中国大手CMP(委託加工)縫製企業 Wuhan Kings Rich Garment Co., Ltd の子会社である。同工場は労働者の権利侵害に関する苦情が相次ぎ、受注量が減少したため閉鎖を決定したとされている。
工場側は勤続年数に応じた法定補償金を支給したうえで、6月末をもって完全閉鎖すると5月13日に工場内の掲示で通知し、1か月前に従業員へ周知したという。
一方、軍事政権が掲げる100日重点計画には、和平、社会経済、農業、インフラ、教育、交通などの分野が含まれているが、労働者問題は優先事項として盛り込まれていない。
また、2025年の総選挙期間中、USDP(連邦団結発展党)の選挙活動としてラインターヤー地区を訪れた元軍人で、現在はホテル・観光・文化大臣を務めるマウン・ミン氏は、労働者に仏像を配布しながら、選挙後にILO(国際労働機関)との協議や社会保障制度の強化、労働者福祉の向上を進めると約束していた。しかし、選挙後に議会が発足した現在まで、労働者問題に関する具体的な成果は見られていない。
中国の武漢企業傘下である KINGSRICH (MYANMAR) FASHION LIMITED は2016年にミャンマーへ進出し、数千人規模の雇用を創出してきた。そのため、今回の閉鎖によって多くの雇用が失われることになると労働問題関係者は指摘している。
工場側は、能力の高い従業員についてはカンボジア、ベトナム、インドネシアの工場で働く機会を提供すると発表した。しかし労働者側は、国内でも権利侵害が続いている状況を理由に、その提案は現実的ではなく、海外赴任を希望しないとの見解を示している。
現在、縫製労働者の基本賃金は1日4,800チャットで、追加手当2,000チャットを含めても合計6,800チャットにとどまっている。この水準は、食料品価格の高騰と比較すると著しく低い。
米価は1ピィ(約2.1kg)当たり約5,000チャット、食用パーム油は1ピッサ(約1.6kg)当たり15,000チャットを超える水準まで上昇している。そのため労働者たちは解雇のリスクを承知のうえで、最低賃金を1日15,000~17,000チャットへ引き上げるよう求めている。
しかし、米国が2025年8月からミャンマー製品への関税を引き上げたことを理由に受注が減少し、ヤンゴンのシュエピタおよびラインターヤー工業団地では縫製工場やバッグ製造工場6か所が閉鎖された。また、一部工場では人員削減や残業時間(OT)の削減も行われている。
閉鎖された工場の多くは、中国系企業が所有する工場であり、シュエピタ・ワータヤー工業団地、ラインターヤーのミャセイングリーン工業団地、シュエリンバン工業団地などに所在していた。
ミャンマー縫製業協会(MGMA)によると、国内には加盟縫製工場589か所が存在し、そのうち56工場が一時閉鎖状態にあると2025年8月時点で発表されている。
軍事政権による政変以降に閉鎖された工場の多くでは労働者の権利侵害が問題となっており、一部企業はある場所で工場を閉鎖した後、別の場所で経営者名義を変えて再開するケースもあるという。これは労働支援団体 STUM(Solidarity Trade Union of Myanmar)の関係者が明らかにした。
縫製業界では、強制労働、長時間労働、残業代未払い、低賃金、権利を主張した労働者への解雇などの問題が以前にも増して深刻化していると労働者らは訴えている。
工場閉鎖後、多くの労働者は海外へ出稼ぎに向かう一方、海外へ行く手段を持たず失業状態に陥る人も多い。STUMの統計によると、失業者数は解雇された労働者全体の約3分の1に達しているという。



























